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発達障がい

発達障がいとは

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私は発達障がいは、生まれて育つ中で明らかになってくる特性であり個性と考えます。本人が望まない場合、どこから病気であると線引きはできないと考えます。ですから、本人や家族が必要ないと考える場合、医療は不要だと考えます。しかし医療現場でもあくまで自分が困る、周囲が困るなどの程度で取りあえず、発達障がいと線引きして治療しております。このあり方を医療化と呼びます。医療化という視点は、善かれと思う医療行為が差別のためのラベリングをしてしまうことがあるという問題点を理解し、差別に加担しないという自覚を医療者にもたらす大切な視点です。ですから当クリニックでは診断だけを行うことはしません。あくまで、本人と家族からの支援や治療のニーズを確認し、双方で必要があると確認出来た場合のみお受けいたします。相談を通じ信頼関係を結びつつ治療を進めて行くことが大切だと考えます。これを共有意志決定と呼びますが、Shared decision makingという英語の方が理解しやすいと思います。

精神医学では、脳機能が発達していく過程においてアンバランスさが生じることで、機能上の混乱が起きると考えて、調整のための薬物療法や適応的でない行動の変容を促すために心理教育プログラムなどの医療を行っております。しかし、これら医療行為は精神医学の仮説に基づく行為であり、特定された原因に基づく行為ではありません。だからこそ、理解と合意が大切です。そのために当院では行動上の困難の確認だけでなく、本人や周囲が感じる困難の生じる心の形を明らかにし、それを軽減するために心理検査を組み合わせて脳の認知機能の偏りの確認をして仮説を説明し、本人が適切と思える場合、治療という形で支援を組み立てております。
行動のアンバランスさとは、ある特定の分野においては非常に優れた能力を発揮する一方で、別の分野については極端に不得手で困難を抱えやすかったり、すぐ疲労を自覚したり、気分のムラに周囲に気づかれたり、などです。誰でも得意不得意がありますが、輝くところもあるのに、学業や家庭生活など日常生活に支障をきたすほど得意不得意の影響が大きく困る、そのメカニズムをとりあえず、発達障がいとみなして、生きやすさをさぐるのが医療化の目的とも言えます。
でも医療化がゴールではありません。本人なりの生きやすさをさぐり、変えたいという願いを支援するのが医療化が許される条件と考えます。ゴールは自分らしく生きているという主観的満足感です。

よく質問されるのですが、発達障がいが起きる原因について遺伝的要因の関係が指摘されておりますが、特定の遺伝子が特定の発達障がいを生みだすのではありません。遺伝子環境相関性と言いますが、タバコや農薬や感染症など妊娠中の環境からのストレス、家族など身近な人間関係のストレス、学校・地域など集団生活での社会との関係でのストレス、いじめや虐待などの育ちに影響を及ぼすトラウマティックストレス、など時代や文化社会的な多様な環境要因によって、遺伝子の変異が生じると考えます。最初の遺伝子の変異はその後の成長で、脳を始めとする身体の成長過程での変化を拡大し、ある段階で脳機能の異常を招くと考えられております。発達症とはこれら多様な要因によって脳の発達が影響を受けてくる形が似てくる部分を集めた集合というイメージです。親の子ども時代とわが子の時代では社会の環境が違い、育ちの中で受けるストレスの形が異なります。30年前の「少し変わった子」は今時の「発達障がい」になるということでもあります。

なお医学上は、発達障がいは神経発達症(発達症)と秩序破壊的・衝動統制・素行症群の2つに分かれます。発達症は行動や認知の特徴(特性)によって、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)の3つに大きく分類されます。実際にはASDの6割はADHDを併発するように、特性は被ることが多く、そこを見極めてその子の特性に合う治療を提供することが大切です。自閉スペクトラム症(ASD)とは、従来からある「広汎性発達障害」や「アスペルガー症候群」などをひとまとめにしてASDに一本化しています。

本ページでは文部科学省の用語である学習障害の方が一般的なのでそのまま使っておりますが、DSM5(2013)では限局性学習症、ICD11(2022)では発達性学習症と呼びます。今後社会でLDが最もありふれた発達症であることが知られたり、合理的配慮に代表されるLDの困難への支援が進む段階で呼称は変わっていくと思います。

主な発達障がいについて

発達障がいは、いずれのタイプにしても見た目ではわかりにくいです。小さいうちは睡眠・哺乳・排泄などが落ち着かず、手が掛かる子も多いですが、全く落ち着いている子もいます。学校に通うようになると、気をつければ、一時的には出来ることも多いため周囲はつい「本人の努力が足りない」と思いがちです。しかし、誰にとってもそうですが、常に努力するのは大変なことです。気真面目な子はうつになり易いです。また、努力をしてもなかなか改善が難しいため、自分は何も出来ないと投げやりになってしまうことも多いです。ですからこそ、周囲が見えない大変さを理解し、努力を励まし、本人の達成感をあげ、自尊感情や自己効力感をあげることが大切です。彼らが必要としているのは挫けそうとき見守ってくれ、温かい声かけをしてくれるコーチです。

自閉スペクトラム症(ASD)

コミュニケーションおよび相互関係の障害

興味のあることを一方的に話し続けてしまうなど、自分中心の考え方が強いことがあります。自分の感情や人の気持ちを理解するのが苦手なことがあります。冗談や比喩が理解できず、想像力が貧困なことがあります。非言語的なサイン(表情・目配せなど)を読み取るのが困難な人がいます。嫌なことでも自分の気持ちを立て直し取り組むこと、相反する葛藤をすることが苦手な点が本質にあると考えます。

同一性へのこだわりや興味・関心の狭さ

日課・習慣の変化や予定の変更に弱く変更出来ないこと。決まったやり方や特定の物事に強いこだわりがあり、周囲が迷惑するなど。これらが受診の契機になること多いです。

その他の特性

聴覚・視覚・触覚・味覚・嗅覚など感覚の過敏性や鈍感さがあります。暑さ寒さや疲れなど身体的な感覚に目が届きにくいことがあります。慣れが出ないため、疲れやすく、苦手な場面や場所が多く、園や学校など社会生活の困難の原因になることがあります。感情制御が悪く癇癪になることがあります。

≫ 自閉スペクトラム症(ASD)についてさらに詳しく

注意欠如・多動症(ADHD)

ADHDでよくみられる3つの特徴

不注意(見えにくいが本質的症状です。聴覚性と視覚性と2つタイプがあります)

物をなくすことや忘れ物が多い、人の話を一定時間集中して聞けない。出来事を思い出せず原因と結果が説明出来ない。時間感覚がない(時間障害)

衝動性

予測や考えなしに行動してしまう、相手の話を待てないことがあります。最後までやり遂げられないという形もあります(実行機能障害)。待つことや欲しいものを我慢できない(遅延報酬障害)という形もあります。感情制御が悪く癇癪になることがあります。

多動(どちらかというと上の2つが原因で生じます)

じっとしていられない、我慢できない、待てない、動き回る、しゃべりすぎる など衝動制御の障害

≫ 注意欠如・多動症(ADHD)についてさらに詳しく

限局性学習症(SLD:学習障害LD)発達性学習症(DLD)

会話は問題ないのに板書や読み書きが苦手です。典型は小1で音読が上手にならない、学年が上がっても拾い読みが続く、計算時指折りをする。小2以降、カタカナがおぼつかない、文章題になると解けない、読めるけど書けない。中1で単語が覚えられないので英語嫌い、などです。IQなど全般的な知的発達には問題が無いのに、読む・書く・計算するなど、特定の事柄のみが難しい状態を指します。連絡帳がかけない、学業成績不振、大人だと事務などの困難が生じます。こうした能力を要求される小学校3~4年生頃から成績不振などがみられたり、学習障害が明らかになります。その結果として、学業に意欲を失い、自信をなくしたり、学校嫌いが出たり、対人関係で問題を起こしてしまうケースもあります。本人の苦労が大人に理解して貰えないため、親や教員に反発して大人との関係が悪くなる子どももいます。

ですから意欲のなさや性格の問題などでない読み書きの負担であることを親・本人・学校に対して明確にし、本人が緊張し苦労する読み書きの負担を軽減する合理的配慮を学校と相談して組み立てることが、自信喪失予防にとって大切です。

≫ 限局性学習症(LD:学習障害)についてさらに詳しく

院長
小川 恵(おがわ さとし)
診療科目
児童精神科、精神科、心療内科
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