限局性学習症(LD:学習障害)とは
会話上は問題がなく、IQのような全般的な知的発達には問題がみられないため、周囲も本人も怠惰や勉強嫌いと誤解しやすいのが学習障害です。小学校から本格化する、読む・書く・計算するの3つのうち、1つ以上の能力の障害が、それぞれ学業成績や日常生活に困難をもたらす状態です。子どもにとって学校での勉強の苦手意識は、自尊感情を下げる最大要因になります。最大で子ども人口の8%くらいが該当するという指摘もあります。
読みであれば、拾い読みや勝手読み、文章を飛ばして読んでしまったり、同じ行にある文章を繰り返して読む。あるいは文章の内容を誤って理解してしまうなどです。また、書きについては、不自然と思える句読点の打ち方、正しく漢字を書くことができないなどです。計算では指折りをしたり簡単な暗算、あるいはひっ算による繰り上げや繰り下げが理解できていないなどがあります。
日本語の読み書きのカバーが出来た軽いLDの子たちの中には、中学校で英単語が覚えられず「英語嫌い」として気付かれる子たちがいます。リスニングは良いのに単語や文法が苦手な場合、一度疑ってみて欲しいです。
文部科学省の基準では2学年分の遅れを目安としておりますので、小学校2~3年生頃に成績不振などがみられる場合、学習障害の有無を明らかにする検査が望ましいです。発見が遅れると、結果として、学業に意欲を失い、自信をなくしてしまうケースもあるからです。
学習障害だけがみられる子どもには教育的な支援が何よりも大切です。読むことが困難な場合は大きな文字で書かれた文章を指でなぞりながら読んだり、書くことが難しい場合は大きな桝目のノートを使ったり、計算が困難な場合は絵を使って視覚化するなど、症状に応じた工夫が必要です。LDに対応したトレーニングは、主に小学生で行います。
中学生になって、板書や書字の困難が顕著な場合は、カメラ板書、ワープロ使用許可など補償的な支援をすることで高校進学や大学進学に備えます。学校と相談しながらやっていく必要があります。コロナ禍のGIGAスクール構想で以前より格段に進めやすくなりました。
保護者と学校が子どもの抱える困難を正しく理解し、子どもの怠慢が原因であると決めつけたり、子どもが自分はバカだからと卑下したりしないで済むように、適切な支援策についての情報を共有し、適切な学習対応をすることが大切です。
LDを抱える小学生にとって、中学での提出物と高校入試で求められる書字の正確さは大きな困難になりがちです。でも、高校以降は自分の好きなことに比重が置けるので、楽しくなっていくことも知っておいて欲しいです。
治療について
余り知られていませんが、LDの子どもがADHDを併発する率は30%とされています(ADHDの子どもがLDを併発する率は50%です)。当院では治療を目的とした診療を行っています。まず、純粋なLDなのかASDやADHDに併発するLDなのかを鑑別診断します。ASDやADHDに併発するLDの場合、服薬・投薬治療でLDの改善が期待できることが多いからです。そのような切り分けをする視点自体が従来少なかったと考えています。服薬治療を行った上で、必要な場合は心理士による幾つかのタイプのトレーニングを勧める場合もあります。
合理的配慮について
平成29年より合理的配慮と呼ばれる学習障害への配慮が学校でも始まりました。小学校での支援や配慮を中学でも申請し、試行錯誤した中学でのテストなどでの配慮は高校受験でも申請できます。高校での合理的配慮は大学受験でも申請できます。2021年度からは大学入学共通テストでも合理的配慮の申請フォームが定まりました。まだ始まって日が浅いだけに、本人・家族と学校と医療との相談が大切になります。本院では、合理的配慮の支援を積極的に勧めております。